法蔵禅寺ホームページ

　
■□法蔵禅寺（ほうぞうぜんじ）について■□

　鳴滝（なるたき）は仁和寺の西、高雄と嵯峨へ行く二つの街道をはさんで、その南北の小盆地にひらける都市近郊の住宅地を言います。
　古くは小松の里とも長尾の里とも呼ばれた古い村落で、鳴滝川（御室川）がこの地に至って滝となり、滔々たる水声が遠くまで鳴りひびいたので鳴滝と呼ばれ、滝に因んで鳴滝村となりました。周山街道沿いの民家の背後（鳴滝宅間町）にそれかと思われる滝があり、幾段にも岩にせかれて落下しているのがみられます。
　歌僧西行法師は、「暫しこそ人目慎みに堰かれけれ果ては涙や鳴滝の川」（山家集、中、恋）と、その奔流に、悲恋に泣く想いを托してうたっています。
　また王朝時代には七瀬の霊所の一つとなり、滝のほとりの清浄な水辺をえらんで、禊祓（みそぎはらい）や祈雨祭等がおこなわれました。
　周山街道沿いの民家の背後（嶋滝宅間町）にそれかと思われる滝が残っていますが、滝は昔ほどの水量はないのが現状です。

　村としての鳴滝は江戸時代の頃、文人雅客の宿泊するところでありました。例えば、歌人では打它公軌（うだこうき）、儒者には藤井懶斎（ふじいらいさい）や桑原空洞（くわばらくうどう）、陶工の尾形乾山（おがたけんざん）、茶人の山田宗偏などがいました。いずれも鳴滝の地を愛し、この地に閑居するに至った人々です。
　なかでも三熊花顛（みくまかてん）は仁和寺の寺侍の子として鳴滝に生れた江戸中期の画家です。世に珍重されるところの『近世畸人傳』は、伴蕎蹊（ばんこうけい）とともに花顛が著わしたものであり、その挿画もかれの筆になるものです。

　鳴滝より周山街道を隔ててその北に三方を山にとりかこまれた小さな渓谷地があります。ここは仁和寺宮覚性法親王（鳥羽天皇皇子）の泉殿の旧跡地に因んで、泉谷（鳴滝泉谷町）と呼ばれています。法蔵禅寺は、この泉谷の西側の低い丘陵台地にあって、その山門はどこかの別荘を思わせる構えを見て取ることができます。

　法蔵禅寺は、もと二条家の山屋敷であったものを、尾形光琳の弟・尾形乾山（陶工）が譲り受け、乾山焼の窯を築いた所です。
　その後、近衛家熙（このえいえひろ････予楽院）と親交のあった百拙元養（ひゃくせつげんよう）和尚が、享保１６年（１７３１）ごろに、予楽院の出資を得、桑原空洞の旧宅をゆずりうけて黄檗宗（おうばくしゅう････禅宗）の寺としたものです。
　百拙は京都の人です。高泉和尚の弟子となり、伏見大亀谷の仏国寺や但馬国（兵庫県）にあった興国寺の住職をつとめ、晩年泉谷に閑居し、寛延２年（１７４９）９月６日示寂。世寿は８２歳でした。詩歌、茶事及び絵画をよくし、墓所は境内背後の墓地にあります。
　法蔵禅寺の方丈は予楽院が永代祈願所として寄進したものを改めたものと伝えられていますが、幾度かの修理を経て今ではほとんど原形をとどめていない状態です。

　また近衛家の家臣渡辺始興の描いた襖絵があったとされていますが、現在は不明です。しかし開山・百拙元養和尚が描いた自画自賛像や黄檗高泉像、釈迦・文殊・普賢・十六羅漢図十九幅そして七条仏師が作成した十六羅漢像等は現在法蔵禅寺の寺宝として所蔵されています。

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